Tere!こんにちは!
暖かい日が増え、春がもうすぐそこまで来ていることを感じますね。
ライターのガイです。

本日は春の日差しを浴びながらのんびりと歩きたい素敵な通りSt Catherine’s Passage(セイントキャサリーンパッセージ、エストニア名Katariina Käikカタリーナカイク、以降聖カタリーナの小径)をご紹介します。 

聖カタリーナの小径は、ただの通りではなく素敵なコミュニティー形成されている場所で、Historic Centre (Old Town) of Tallinn(ヒストリックセンター(オールドタウン)オブタリン、タリン歴史地区(旧市街)以降タリン旧市街)で最も美しい通りと言われています。

それはなぜでしょう?まずは歴史を紐解きます。


聖カタリーナの小径の歴史

 タリン旧市街を地図で眺めたとすると、1246年に建てられたSt. Catherina Church(セイントキャサリーナチャーチ、エストニア語でPuha Katariina Kirikプハカタリーナキリク、以降カタリーナ教会)が併設されていたOld Dominican Monastery Claustrum(オールド ドミニカン モネステリークラウストゥラム、エストニア語でDominiiklaste Munga kloosterドミニクラステ・ムンガ・クロースター、以降ドミニコ修道院)の南側に位置する通りで、聖カタリーナの小径は西側(左手)のヴェーネ通りと東側(右手)のムーリヴァヘ通りを結ぶ小径となっています。

タリン旧市街全体がそうである様に、聖カタリーナの小径石畳の続く道で、かつて教会でもあった修道院の建物と反対側の建物には石造りアーチが架かっており、通りの修道院側の壁には人のサイズよりも大きな、14~15世紀墓石が飾られているのが特徴で、フォトジェニックな風景が楽しめます!

墓石はカタリーナ教会にあったもので、タリンの役人や、ブラックヘッド組合大ギルドなどに属していたものです。12個墓石がカタリーナ通りに展示されています。

19世紀に教会の西部が修復される際に、保存状態の良かった墓石が壁に飾られました。

1874年にタリン市長Andreas Koch(アンドレアス・コッホ)氏により、カタリーナ教会の廃墟となった建物を舗装するために保存状態の良い墓石が取り付けられました。

のちにタリン司令官Woldemar Salza(ヴォルデマール・ザルツァ)中将のコレクションとして展示されました。

そして1882年にタリン市長のArthur Girard de Soucanton(アーサー・ジラール・ド・スーカントン)氏により、ほとんどの墓石が夏の別荘地であるタリン近くのRocca al Mare(ロッカアルマーレ)移動され、ローマ街道である小さな通り、Via Appia(ヴィア・アッピア(アッピア街道))展示されました。

その後1959年から1960年にかけて、墓石はロッカアルマーレから戻されて、現在のカタリーナ通り、旧教会の南側の壁に展示されました。

修道院の反対側の建築物はその起源は不明となっているのですが、1366年、タリン市より通りにある土地と建物の複合体は貴族ヨハン・ハマーに譲渡され、不動産登録記簿に記録されていることから私有地であるとされています。記録には細々としたささいな事などが言及されていました。

ある建物から雨のしずくが誰かの中庭に滴り落ちるかもしれないことや、特定の壁の位置やその所有権は全ての関係者に属するに等しいこと、指定された壁に新たに増築することは良いが、窓の開口部を壊してはいけないことなどがその例としてあります。

聖カタリーナの小径の特徴である壁と壁の間に架かるアーチは、教会の補強のために造られたものですが、通りの土地を含むその複合体建築物の所有者との具体的な合意によって建てられました。

その対価として、修道院は所有者がいる限り庭から教会堂への門を再建し、所有者が変わればその門は直ちにレンガで塞がれると約束されていたことなどがありました。

当時としては有力なドミニコ修道院が、建物完成させるために市民と協議する必要があったというのは興味深い点とされています。
 


その美しさとは ~リノベーションを繰り返しできあがった複合体建築物~ 

さて、タリン旧市街といえばその美しさは今までにも記事で沢山ご紹介した通り、通りを含め中世の街並みがそのままに残る、まるでおとぎ話の世界に舞い込んだかのような歴史的建築物美しさですが、そもそもなぜそれを美しいと思うのでしょうか。最も美しいと称されるのでしょうか? 

先ほどの歴史でも記載した通り、聖カタリーナの小径にある修道院の反対側の建物は私有地として登録されていたのですが、その売買契約書や改造契約書、または贈呈品記録などからも、建物は沢山のリノベーションを繰り返しています。

屋根裏部屋、貯蔵のための地下室や、中庭、石造り、錬鉄の物など、様々な改装が何度も繰り返されてきました。よって、建物の完成時期機能も様々です。

今の美しい姿として私たちが観ることのできる”魅力”ですが、沢山のリノベーションをすることによってその魅力も増築されていっているのです。

一度建てては壊すスクラップアンドビルトではない、正に持続可能建築物なのです!


アートが集まるコミュニティー ~カタリーナギルド~ 

次に、アートが集まる場所「カタリーナギルド」についてお伝えします。

その名の通りギルドとは、商人・職人組合のことですが、カタリーナギルドは1995年に新しい息吹をあげます。

聖カタリーナの小径には様々なオープンスタジオがありもともと職人アーティストたちの日常的な仕事場となっていました。

そして8つのそれらのスタジオと14人女性アーティスト統合するカタリーナギルドが生まれました。

カタリーナギルドは長い歴史を経て今も生き続けていると言える聖カタリーナの小径の、タリン旧市街の、エストニア過去現在を結ぶ象徴的懸け橋となっています。

じっくり個々と集団の関係と可能性について考慮し、常に変化し続ける環境においても協力し合い、今日までしっかりと機能する組織となったそうです。

コミュニティーの即効性、創造性、そしてひたむきさによって組織は支えられており、創作活動だけでなく、ギャラリーエキシビジョンや教育に関わりながら文化やアートに貢献しています。
それではカタリーナギルドのアーティストご紹介いたします!

  1. ガラス工房Koppel & Keerdo Klaasikoda-Galerii(コペル・アンド・ケルド クラーシコダギ・ャレリー)
    Kai Koppel(カイ・コペル)氏Viivi-Ann Keerdo (ヴィヴィアン・ケルド)氏によるガラス工房です。カラフルな原色が魅力のガラス製品展示されています。
  2. 陶器工房
    Kadri Jäätma(カドゥリ・ヤートゥマ)氏Ülle Rajasalu(ユーレ・ラヤサル)氏により1995年から始まった工房。昔からのギルドのように親方と徒弟という関係性の中でカドゥリ氏はユーレ氏の徒弟としてキャリアをスタートさせ、工房ではカドゥリ氏とユーレ氏含め5名の作家の作品が展示されています。こちらの工房で陶芸体験を楽しむこともできます。
  3. テキスタイル工房Kaunitar ja koletis (英語名Beauty and the Beast カウニター・ヤ・コレティス) 
    テキスタイルアーティストKaire Tali(カイレ・タリ)氏によるテキスタイルデザインの工房。
    沢山の手描きのシルクスカーフや、様々な素材を組み合わせた色彩豊かなファッションアイテムが楽しめます。
  4. テキスタイル工房Ene and Anni’s Patchwork studio(エネ アンド アニズパッチワーク スタジオ)
    エストニア・キルトメーカー協会の創始者であるEne Pars(エネ・パース)氏Anni Kreem(アンニ・クレーム) 氏により1995年に始まりました。
    大きなテキスタイルのタペストリーが大胆に飾られ、美しいデザインに圧倒されます。
    アンニ氏とエネ氏はともに伝統的なデザイン大切にしながら新しいデザインを提供しています。
    Maija-Liisa Kruus(マイヤ-リサ・クルース)氏の手書きによるデザインのパッチワーク作品や、Emma Leppermann(エマ・ラッペルマン)氏の動物のデザインのカバン、テキスタイルデザインのウールストールなどがあります。 
  5. 皮細工工房
    Pille Kivihall (ピーレ・キヴィハール)氏Jane Rannamets(ジェーン・ランナメッツ)氏による皮細工の工房です。
    皮を使った製本でモダンなデザインを追求しており、日本ではあまり見たことのない皮製ブックカバーなどが展示されています。
    他にも様々なアーティストの作品が展示され、皮細工を学ぶ海外からの学生も受け入れています。
  6. ジュエリー工房
    2000年からカタリーナギルドに参加しているÜlle Kõuts(ユーレ・クイツ)氏Krista Laos(クリスタ・ラオス)氏によるオープンスタジオです。
    シルバー、ゴールドにパールなどの素材を取り入れたり、様々な金属を融合させた独特のデザインが魅力のジュエリーを楽しむことができます。
  7. 帽子工房
    Elvira Liiver(エルヴィラ・リーヴェー)氏Liivia Leškin(リーヴィア・レシュキン)氏により1994年4月4日にオープンしたスタジオです。
    エルヴィラ氏は大学で歴史学を学んだあとテキタイル修復やレース作りやキルト制作を学びました。
    歴史を学んでいたことからも、かぶり物が時代を超えて地位を象徴するものであることを知っていて、それらからインスピレーションを受けたデザインの天然素材の帽子を提供しています。 

ヴェーネ通りの正面の建物は15世紀のもので、当時の様式に合わせた大きな玄関があり狭い廊下へと改築されました。

帽子工房とジュエリー工房、テキスタイル工房、レザーアート工房がありますが、もともと倉庫だった場所を改築している場所や、中世の大きな煙突が残っている場所があり、工房の改築中に17世紀の石柱が発見されたりしたこともありました。

ムーリヴァヘ通り側にはガラス工房がありますが、複合体建築物の中で最も古い建物となっています。

またヴェーネ通りに面した入口から入る事のできるMeistrite Hoov(メイストリエッテフーヴ、職人の庭)と呼ばれる中庭も複合体施設に含まれており、そちらでも様々な職人の作品が展示、販売されています。

レストランや老舗チョコレートカフェなどもあり、メインストリートからは隔離されながらも活気あふれる場所となっています。 

ドミニコ修道院やカタリーナギルドのある複合体施設など、共通して存在する中庭は様々な人が集まる複合体建築物には切っても切れない存在です。

中庭が果たす役割は、そこに住む人々、訪れる人々の繋がりを生む場所となることであり、日本でも関東大震災後から都市型集合住宅が建築されるようになり欧州建築に倣った中庭が作られるなど、人々のコミュニティー形成に役立たれました。

個人だけでない、人々の繋がりを生む大切な場所である中庭教会の前の中庭では地元の職人の人々が昼休みにバレーボールをしたり、洗濯物を干したりしていたそうです! 

いかがでしたでしょうか?

一番美しいと言われる聖カタリーナの小径は、建物も含めたその見た目の美しさもさることながら、長い年月をかけてリノベーションを繰り返し、アートを通して人と人、時代の繋がりを築き上げてきた人々の想いのつまった唯一無二の存在として今もなお沢山の人々の心を繋ぐ聖なる小径として私たちを楽しませてくれています。

エストニアのタリン旧市街に訪れた際はぜひ足を運んでみてくださいね! 

餅つき大会や、夏休みのラジオ体操、バザーなど中庭での楽しかった思い出が頭をよぎった団地育ちのガイが、聖カタリーナの小径についてお届けいたしました。最後までお読みくださり、ありがとうございました!


<St Catherine’s Passage> 情報

住所
Katariina käik, Tallinn Old Town(Googleマップ)


ホームページ: <VisitTallinn>


About the Author

Gai

好奇心旺盛で、猫とアンティーク、ヴィンテージ、エストニアの文化、イギリス英語をこよなく愛するライターのガイです。好きな言葉は「我思う、故に我在り」。温かいココアが大好きです。

View All Articles