Tere! 皆様こんにちは。
エストニアに初めて渡航してから、語学を学ぶことが好きになりました。
外国語は地域ごとにニュアンスが変わったり、同じ国でも全く違う民族がいて独立したような言語が存在するところが面白いと感じています。
南エストニアを訪問してから、ますますエストニアが好きになりエストニア語の奥深さを感じ、もっと語学を上達させたい!ライターのMayaです。
今回は、2016年に開館したエストニア国立博物館についてお伝えいたします。
エストニア国立博物館とは
エストニア国立博物館(Estonian national museum)は、エストニア語でEesti Rahva Muuseum(エースティ・ラフヴァ・ムーセウム)といい、エストニアの第二都市・タルトゥ市の中心から約4kmほど北に位置しています。
タルトゥの人口は約10万人で、エストニアでは2番目に人口の多い都市です。
6000m2もの広さを誇るこの博物館は、エストニア国内最大規模で館内は主に3つの展示に分かれています。
エントランスに入ると正面にレセプションがあり、公共空間から奥の展示スペースへと続いています。
建物は池をまたいでおり、池の上はレストランです。
レストランは星空のように無数のハンギングライトが輝く、開放的な空間となっています。
館内は、会議室・公共ギャラリー、ライブラリー、ワークショップスペース、オフィス、膨大なコレクションの保管スペースなどで構成されており、まさに文化的な施設となっています。
過去の記憶を未来へと繋げる建築デザイン
エストニア独立15周年を記念して建築初の国家プロジェクトとして国際コンペが行われたのが2005~2006年で、設計期間は2005年10月~13年の11月です。
この国際コンペで108の案件から選ばれたのが、アーキテクツ(DGT.)のプレゼンテーションで、イタリアの建築家のDAN DORELL(ダン・ドレル)氏・フランスで活動しているLINA CHOTMEH(リナ・ゴットメ)氏、日本人建築家の田根剛氏によって設計されました。
施工期間は2013年の1月~16年の2月に渡り、2016年の10月1日に開館しました。
階数は地下1階、地上2階建てです。
1つのブース当たり、1500人ものエキスパートが設計に携わっているとされ、この敷地の広さとプロジェクトの規模を考えると、この博物館にかける情熱が伝わってきますね。
エストニア国立博物館は、旧ソ連支配下時代の軍用機地の滑走路だった敷地に建てられました。
エストニアの歴史をさかのぼると、デンマークやスウェーデン・ロシア帝国・戦後のソ連などの占領下でネガティブなイメージもあるのですが
設計者は「旧ソ連支配下時代の軍用機地の滑走路を否定せずに、その延長線上に長さ355mの建物を配置し、過去の記憶を未来へと続くデザイン」にしました。
博物館全体が羽ばたく様子を表現されています。
エストニアが辛い時代を乗り越え、次なる未来に飛び立って行くようなデザインは迫力がありますね。
建築家の田根氏は、「政治や歴史、文化上の負の遺産を否定することなく国家のアイデンティティーを確立できるよう、ポジティブな発想で未来に羽ばたいでいこう」というコンセプトが勝利につながったと語っています。
また、国立博物館は 2年に一度フランス文化庁が主催するフランス国外建築賞(AFEX 2016)で
大賞のグランプリを受賞し 、ミース・ファン・デル・ローエ賞にもノミネートされるなど 国際的な脚光を浴びました。
エストニアの民族が受け継いできたシンボル
博物館の355mの長大なガラス全面には、森と雪景色をイメージした図柄をシルク印刷で描かれています。
これは周囲の森が映り込んだ時になじむ美しいガラスのディテールデザインとなっており、
雪に包まれたエストニアの風景をコラージュした画像を解析し、ドットで表現した10種類の図象が、遠くから見ると浮かび上がります。
そのドットを構成するのは、エストニア民族が受け継いできたシンボル「オクタグラム」をモチーフとしたもので、ガラスに近寄ると16mm角の5種類のパターンが見えます。
オクタグラムとは、八つの角を持つ星型多角形で、エストニアの冬の雪の結晶をイメージさせます。
シンボルの突起が8つの希望を表しているという言い伝えがあり、周囲が暗くなったときに浮き上がる模様は、「民族の記憶に包まれているようだ」と好評です。
模様が浮き出しすぎず、でも近づくとモチーフがはっきりと見えるのです!
気温が+30℃から―30℃と、年較差60度以上の厳しい気候条件に耐える工夫もガラスの素材を駆使し盛り込まれています。
国の歴史を時代の流れで示す展示
3つの展示のうちの1つは、Encounterという展示です。
現代・近代・古代のエストニアというように時間を遡っていくような展示方法がとられており、民族衣装をはじめとする展示品を鑑賞できます。
一際目を引くものが、エストニア国内の方言を集め、地元の人の肉声を録音し展示しているブースです。
マップにボタンがついており、そのボタンを押すと、エストニアのその地方・地域の人が話している音声が流れる仕組みとなっています。
エストニアは面積が日本の九州ほどの小国ではありますが、その中でも北タリンの人が話している言葉、サーレマー島等の島々の方言、南エストニアの言葉やヴォル地方で使用されているヴォル語、そして他にもかなりの数の方言が存在しています。
エストニア語は歴史的に外国語の影響を受けた言葉も多いため、とても奥が深いと感じます。
実際にこのように博物館で様々な方言を一度に聞くことができるのは、エストニア国立博物館ならではの面白いプロジェクトですね。
実は、このプロジェクトの声道模型を手がけたのは、荒井隆行氏という日本人の方です。
博物館の共同設計をされた方も日本人の田根剛氏で、フランス政府公認建築家で、フランス・パリを拠点に活動されています。
エストニア国立博物館を通じて、二人の日本人の方が大きなプロジェクトへの関わっていますね。
まさに、エストニアと日本の架け橋となっていらっしゃる、このような素晴らしい事実を知り、日本人として誇らしく思います。
フィン・ウゴル民族文化の常設展・Uurali Kaja
Uurali Kaja(ウウラリカヤ/ウラルエコー)では、フィン・ウゴルの民族文化について紹介しており、言語、遺伝子、場所、人口に関する様々なことを学ぶことができます。
エストニア語はフィン・ウゴル語派(Finno-Ugric languages)グループに分類されており、言語の同グループにはフィンランド語やハンガリー語が含まれます。
この他にも、エストニアのテクノロジーを感じられるコーナーもあり、説明が書かれたボードの表示言語が変化します!
自分の持っている入場チケットをかざすと、展示の解説ボードの表示が自分のチケットに登録されている言語へと変化し、これはエストニアとアメリカの技術者によって開発されました。
また都会の子供に関する展示、国旗に関する展示、エストニアにおける歌の文化、郵便の仕組みなどエストニアという国の文化を知る上で重要な展示が並んでいます。
首都タリン市からタルトゥ市へデイトリップ
首都タリン市からタルトゥ市へのアクセスは、タリンのバスターミナル(Tallinna Bussijaam/タリンナ ブッシヤーム)よりバスで行くことができます。
Lux Express等の交通機関のウェブサイトより事前に予約や決済が可能で、pdfのチケットを印刷して持参するシステムとなっております。
もちろん、バス停のカウンターでも購入が可能ですが、シーズンによっては割引価格のチケットが売り出しされるためチェックすることをお勧めいたします。
先進的な技術と伝統と歴史がうまく構成された博物館は、見どころが満載でタルトゥに訪れたら是非訪れて頂きたいスポットです。
タルトゥへのアクセスは、首都のタリンから片道約3時間ほどで、 日帰り旅行をするのも面白そうですね!
そして、2024年には、このエストニア国立博物館のあるタルトゥ市が、ヨーロッパの文化の首都になることが決定しました。
エストニアの伝統的なお土産が並ぶミュージアムショップ
ミュージアムショップでお土産を探すのは、美術館や博物館が好きな方には嬉しい時間ですよね。
エストニア国立博物館のミュージアムショップでは、エストニアでしか購入できない魅力的なお土産が販売されていますので、是非チェックしてみて下さい。
エストニアの歴史や文化について見聞を深めると共に、建築デザインに圧倒されること間違いなしのスポットです。
この機会にぜひ一度、ヨーロッパの文化の首都、タルトゥにある国立博物館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
ライターのMayaがお送りいたしました。
最後までお読み頂きありがとうございました!
<Estonian National Museum> 情報
営業時間
月曜日-日曜日: 10:00~18:00
住所
Muuseumi tee 260532 Tartu (Googleマップ)
ホームページ: @Eesti rahva muuseum
Facebook: @Eestirahvamuuseum